大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)69号 判決

記録を調べてみるに、原判決が、その理由において、その認定した被告人の犯罪事実として、同人に対する起訴状記載の公訴事実を引用していること、及び、右公訴事実中の第七に「同月五日頃、同郡篠井村大字芝河原地内に於て、同会社所有の高圧線二本を窃取せんとしたるも、附近の者に発見妨害されるを虞れて、その目的を遂げなかつたものである。」との旨の記載があることは、所論のとおりであつて、右の記載内容は、前示起訴状中の罪名、罰条の記載と対照するときは、窃盜未遂の犯罪事実を記載したものと解される。

而して、未遂罪とは、犯罪の実行に着手して、これを遂げない場合をいうのであるから、未遂罪の犯罪事実を判示するには、必ずや、犯罪の実行に着手したことを認めるに足る具体的事実を示すことを要するばかりでなく、未遂犯には、犯罪の実行に着手した後、意外の障礙によつて遂げなかつたいわゆる障礙未遂と、自己の意思によつてこれを中止したいわゆる中止未遂との区別があり、両者が、法律上の取扱を異にしていることは、刑法第四十三条の規定によつて明らかであるから、未遂罪を判示するに当つては、障礙未遂であるか、中止未遂であるかを判定するに足る事実を明らかにすることを要するものといわなければならない。然るに、原判決が、その認定事実として引用している起訴状記載の公訴事実中第七には、ただ、前示のような記載があるだけであつて、被告人が、右高圧線窃取の実行に着手したことを認めるに足る具体的事実の記載がないのであるから、果して、右窃取行為に着手したものであるかどうかが判文上不明であるばかりでなく、前記のような「附近の者に発見妨害されるを虞れて、その目的を遂げなかつたものである」との記載によつては、障礙未遂の事実を判示したものであるか、中止未遂の事実を判示したものであるかの区別も亦、判文上明らかにされているものとは認められないのであるから、結局、原判決は、右窃盜未遂の事実については、罪となるべき事実を判決に示さなかつたことに帰するものというべく、従つて、原判決には、この点において、理由不備の違法があるものといわなければならない。

論旨は理由がある。

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